マッチングサービス、アプリでつくる?サイトでつくる?

マッチングサービスというものは多岐にわたりますが、ネットを使ったものは大きく2つに分けることができます。
それは『ブラウザ上で使うことのできるサービス』と『アプリで使うサービス』です。

先に結論を述べると、この2つに『どちらが良い』という決定的な解答はありません。マッチングサービスの形態は色々あるので、ケースバイケースで解答は変わるからです。
しかし、1つ1つのサービスに目を向ければ、『どちらが良いか』という問いに必ず解答が存在します。
今回はその点についてご紹介します。

目次

サイトとアプリの基本的な違い

まず最初に『サイト』と『アプリ』で何が違うのか、その点から整理しましょう。

サイト上のサービス

サイト上でマッチングサービスを開きたい場合は、システムをサーバに用意し、ドメインと紐づけさえしてしまえばサービスを開始することができます
種別によっては法律に従って届け出を出す必要がありますが、それ以外の許可は必要ありません。

アプリ上のサービス

まずシステムとしてのアプリを用意したうえで、AppストアやGooglePlay等のプラットフォーム審査に合格しなければなりません。
特にAppストアの審査は厳しく、『正しく年齢制限が課せられているか』『法令が守られているか』『動作の不備や問題はないか』『解約方法はわかりやすく提示されているか』等、手動の調査が行われます。

他の点は後述しますが、基本的にアプリの方が手間やコストが掛かります。

開発・運用コストも、アプリは高くなりがち

次にコスト部分について見てみましょう。

開発費の違い

まずシステムの開発費が必要ですが、この点もサイトのほうが有利です。
サイト上のサービスは、『クロスプラットフォーム対応が容易』です。
正しい記述さえ行えば、android、iOS、Windowsはもちろん、Chrome、Edge、Safariどれでも同一の動作が期待できます。

しかしアプリの場合は『iOS』と『android』という2つのOSに対応させなければなりません。
もちろん、片方のプラットフォームだけでサービスを展開することも可能ですが、日本では各シェア率がほぼ50:50と言われているため、文字通り半数を切り捨てることになってしまいます。

FlutterやReactNativeといった、クロスプラットフォーム対応のフレームワークを使うこともできますが、それらの知識を持つシステム会社も多くはないので、結局掛かるコストはあまり変わらないでしょう。

更に開発後も、先程述べた通り『アプリ審査』が必要となります。これはAppStore、GooglePlay両方必要です。この点でもコストと期間を割かなければなりません。

運用コストも…アプリのほうが高額

では実際に運用し始めてからはどうでしょうか。
残念ながらこちらもアプリの方が高額です。

マッチングサービスの維持費といえば、人件費のほかは「サーバ管理費用」「SMS・メール費用」「アップデート費用」「システム管理・保守費用」等がかかります。
「サーバ管理費用」「SMS・メール費用」については、サイトであれアプリであれ、どちらも等しく必要です。(アプリであっても、システムを動かすサーバは必要となります)

そして「アップデート費用」「システム管理・保守費用」については、サイトよりアプリの方が高くかかってしまうのです。
先程も述べた通り、アプリではandroid・iOSの2種類を作らなければなりません。それはアップデートの際も同じで、それぞれのアプリに適したアップデートや、保守を行う必要があります。

更に、アップデートを施す場合、サイトではシステム側が更新を掛ければ即時全ユーザーがアップデートされたものを使うことになります。
しかしアプリ側は、アップデートをいつ施すのか、ユーザー側が決定します。
よってアップデート前の環境にも、しばらくは対応させる必要があるのです。ここに少なからず手間とコストがかかります。

コストの観点から言えば、圧倒的にサイトへ軍配が上がるでしょう。

アプリはユーザー体験をよくすることができる

ではアプリにはメリットがないのでしょうか?
そんな事はありません。

まずアプリの場合、動作のレスポンスが非常に速いです。
なぜなら”サイト型”のサービスでは常にデータをサーバとやり取りしなければなりませんが、”アプリ型”であれば必要最小限のデータのみをサーバと通信できるからです。

更にアプリであれば、複雑な処理をバックグラウンドで実行したり、行動パターンを予測して、必要となるデータを事前に読み込むことが可能です。
“サイト型”の場合は、ユーザーのリクエストと同時に処理を行う必要があるため、どうしてもレスポンスは悪くなります。

この点、特に顕著な例としては『スワイプ操作』が挙げられます。
恋愛系のマッチングアプリでは、出てくるプロフィールを次々スワイプして、マッチング相手を探す機能が付き物ですが、
これをスムーズに実行するのは、アプリのほうが圧倒的に向いています

アプリであれば、GPUアニメーションや、タッチイベントの処理等を、デバイス側と直接連携して行うことができます。
更に、次表示するカードを事前にレンダリングしておくことで、スワイプ後も遅延なく表示することが出来ますし、まだ表示していないカード情報を非同期で通信し、キャッシュに保存しておくといったことも、アプリ側が得意とするものです。

これらの処理をサイトで行うことももちろん不可能ではありません。不可能ではありませんが、エンジニアが顔をしかめる程度の手間がかかりますし、同一スペックのデバイスで比較した場合、明らかにアプリのほうが軽快に動作することでしょう。

アプリは使い続けてもらえる可能性が高い

そしてアプリの強い点としては『使い続けてもらえる』ことも挙げられます。

みなさんがサイト上でよく使うサービスは、日頃どのようにアクセスされますか?
ブックマークから入るか、都度検索して入る方が多いでしょう。
一応機能としては、WEBサイトへのショートカットをホーム画面に配置することもできますが、わざわざそうする人は稀です。

しかしアプリの場合は、インストールという最初のハードル自体は高いものの、インストール後はホーム画面という一等地にアイコンが並ぶ形となります。
スマートフォンを開く度アイコンが目に入り、押せばすぐにサービスが開始されるのです。これは使い続けてもらう上で、アプリ側の持つ大きな優位性です。

また設定にもよりますが、アプリであればインストールした人へ簡単にプッシュ通知を飛ばすことが出来ます
サイトの場合もプッシュ通知を飛ばすことは可能ですが、会員登録してくれた人にも別途プッシュ通知の許可を取らなければなりません。
使い続けてもらう上でプッシュ通知は大事な要素ですが、ここでも差が出る形となります。

マッチングサービス アプリ・サイトのどちらを選ぶべきか?

この通り、サイト・アプリという形態それぞれに長所と短所が存在します。
では最終的に、どのような基準でこれら形態を選択すればよいでしょうか?

いくつか基準を提案しましょう。
まず『ビジネスマッチング』の場合は、『サイト型』で提供することをおすすめします。
なぜなら『ビジネスマッチング』の場合、『基本的にパソコンで扱うことが多い』ですし『1つのアカウントを複数人が運用する』ことも多々あるからです。
どちらもアプリには向いていない特性なので、”取引先仲介”や”クラウドソーシング”といったビジネスマッチングの場合は、サイトでの提供を強くおすすめします。

もう一つの基準として『需要に確信が持てていないマッチングサービス』の場合も、サイトから始めましょう
先ほどご紹介した通り、アプリ型のサービスはサイト型のサービスに比べて格段にコストと期間が掛かります。
『需要がある』と確信出来ていない状態からアプリを始めるのは、リスクでしか有りません。
例え理想とする形態がアプリだったとしても、まずはサイト上でサービスをMVP開発し、需要が確認できてから開発を行うべきです。

では逆に、アプリでリリースするべきサービスとはなんでしょうか?
それは『需要が確認できており、かつ個人がターゲットとなるサービス』です。
すでにサイト上でサービスを展開しており、需要が確認できているのであればアプリ化にも意味があると言えます。
サイト上で同様のサービスを展開していなかったとしても、訴求できるユーザーを抱え込んでおり、勝算があるのなら、これもアプリ開発に賭けてみる価値があるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次