先日の記事では、IT等に用いられる3種の補助金をご紹介しました。
その際、補助金を使えるケースや、実際の費用感等についてもご説明しましたが、
いざご自身のケースに当てはめる際、『どの補助金に申請すればいいのか』を悩まれると思います。
正直この問題はケースバイケースです。
一瞬でどちらの補助金を使うか判断がつくケースもありますし、
逆に補助金に詳しい人でも悩むケースがあります。
というのも、各補助金の特色や使うためのルールが細かく設定されているので、『目的としては”IT導入補助金”だが、ものづくり補助金を使うしかない』といったケースや『一見”ものづくり補助金”だが、実は”IT導入補助金”を使ったほうがいい』というケースが混在するのです。
今回はその複雑なルールをわかりやすく切り分けて、IT導入補助金・ものづくり補助金、どちらの補助金を使ったらいいのか、という点を解説いたします。
(なお、ここ数年でのルール改定により、小規模事業者持続化補助金はITでの利用が行いにくい状況なので、今回の比較からは外しております)
ECサイトを作る場合はどちらの補助金?
もしECサイトを作るにあたって、『補助金を使いたい!』と思った場合、どちらの補助金を使ったほうが良いのでしょうか。
実は『IT補助金』『ものづくり補助金』どちらも『ECサイトを作る』事自体は可能です。
ただし、『ECサイトだけを作りたいのか』『商品開発等も含めてECサイトでの事業を行いたいのか』によって、使う補助金が変わってきます。
ここは例え話で考えてみましょう。
とある土地で『いちご農家』をしているAさん・Bさんがいるとします。
Aさんは、規格外で出荷できなかったいちごを、ジャムにして売ることを考えつきました。
しかし『ジャムの製造機器を購入する費用』『試作品の制作費』『ジャムをPRするHP作成と広告費』『ジャムを販売するためのECサイト』等、ちょっと考えても出費が嵩みそうです。
そのため補助金の利用を検討しています。
Bさんも同じくいちご農家ですが、Bさんは先にジャムを作ることを思いついており、すでに外部の業者へ依頼してジャムの製造を行っていました。
ジャムの製法も固まり、パッケージもできており、あとは販売チャンネルだけです。
ECサイトを作ろうと思いつきますが、すでに費用がぎりぎりなので、ここだけでも補助金を使いたいと思っています。
それぞれどの補助金が使えるでしょうか?
正解はAさんは『ものづくり補助金』、Bさんは『IT導入補助金』です。
Aさんのように、トータルで補助を受けようと思った場合は『ものづくり補助金』を使うことになります。
ものづくり補助金であれば、製造機器のコストや試作品の制作費、ECサイトの制作まで幅広く補助金を使うことができます。
一方でBさんのように『販売するECサイトだけを作りたい』場合は『IT導入補助金』を使うこととなります。
IT導入補助金には数々のECサイトパッケージが用意されており、非常に低コストでオリジナルのECサイトを持つことができるでしょう。
なお重要な点として、これらは逆にすることができません。
AさんがIT補助金を使った場合、『ジャムの製造機器購入費』や『試作品の制作費』等を捻出することは制度上不可能です。
IT補助金は登録されているITツールの導入にしかその費用が使えないからです。
一方でBさんが『ECサイト単体』だけをものづくり補助金で通すことも不可能です。ものづくり補助金には何かしら革新性が求められます。
一見、”Bさんも新しくジャムを作ったのになぜ使えないのか”と思われるかもしれませんが、
Bさんは補助金を申請する前、現時点ですでにジャムの製造を終わらせてしまっています。
どの補助金でも、すでに着手している事業に対して補助金を使うことは基本的にできません。
なので、いくらジャムが新製品であろうと、その販売用ECサイトだけをものづくり補助金に申請することはできないのです。
ただし、裏技というか例外も一つあります。
ここでBさんが、最初に作ったジャムとは少し違う、非常に低カロリーで革新的なジャムを新たに企画したとしましょう。
そしてその新たな『低カロリージャム』の製造費・宣伝費・そして販売用ECサイトの費用をものづくり補助金に申請するのであれば、おそらく問題なく申請ができることでしょう。
そこですでに作ってあったジャムを一緒に売っても、特に問題はありません。
(ただし、その場合すでに製造したジャムに比べてどのような革新性があるのか、という点が審査されることになります)
このように、補助金を受ける対象が『革新性のあるプロジェクト』なのか『ITツール単体なのか』というのが、最初に判断する基準となります。
まずここで判断されてください。
社内にITツール等を導入したい場合はどちらの補助金?
次に社内で使うITツール等を導入したい場合についてお話します。
こちらは割りと簡単ですね。
新規でオリジナルのITツールが必要な場合、『ものづくり補助金』
既存のパッケージングされたITツールを導入したい場合、『IT導入補助金』となります。
ただし、いくつか気をつけていただきたい点があります。
注意点1:ものづくり補助金の場合は、革新性or手順の改善が必要
『ものづくり補助金』をこのような要件に使う場合は、『デジタル枠』に応募する必要があります。
デジタル枠には以下のような要件が定められています。
(1)次の①又は②に該当する事業であること。
①DXに資する革新的な製品・サービスの開発
(例:AI・IoT、センサー、デジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化等の機能を有する製品・サービスの開発(部品、ソフトウェア開発を含む)等)
②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善
(例:AIやロボットシステムの導入によるプロセス改善、複数の店舗や施設にサービスを提供するオペレーションセンターの構築等)
※ 単にデジタル製品の導入やアナログ・物理データの電子化にとどまり、既存の業務フローそのものの見直しを伴わないもの、及び導入先企業において前述の単なる電子化にとどまる製品・サービスの開発は該当しません。
(例:帳票の電子保存システム・デジタルスキャナ・電子契約書サービス・医療用画像診断機器の導入等、電子書籍・写真等のアルバム・動画編集サービスの開発等)
太字の部分を見ていただくと分かる通り、ただアナログでやっていたものをデジタルにするだけ……というツールでは、申請を出すことができません。
何かしら革新的なものか、生産プロセス・サービス提供方法を改善するような、そんな業務ツールでなければなりません。
その点ご注意ください。
注意点2:ITツールとして登録されていなければ、IT補助金は使えない
また、IT補助金を使う際にも注意していただきたい点があります。
まず、導入したいITツールがIT補助金のITツールとして登録されているかをご確認ください。
ITツールの検索はこちらから行えます。もし見つからない場合は、そのツールの導入に対してIT補助金を使うことができません。類似するツールを探す必要があります。
更に、ITツールには『いくつかと組み合わせなければ導入が難しい』ITツールもあります。
というのも、ITツールにそもそも登録する要件として『受発注・決済
・会社・EC・セキュリティ』等の規定があり、更にその機能を複数満たすものでなければ、申請ができないようになっているのです。
注意点3:IT補助金でも、うまくカスタマイズすれば、ほぼオリジナルのITツールをつくることはできる
そしてもう一つ気をつけていただきたい点です。
最初にお話した判断基準の部分で、『自社専用の業務管理ツールが欲しいから、ものづくり補助金しか使えないのか……』と思われたかもしれません。
その考えは定義上は正しいです。
しかしながら、IT補助金に登録されているITツールの中には、非常にカスタマイズ性に優れたITツールがいくつか存在します。
例えば業務アプリで有名なkintoneや、Pigeon Cloud、Salesforce等が、ITツールとして登録されています。
それらをうまく調整すれば、ほぼオーダーメイドで作ったのと遜色ない、機能・UIを持つ業務管理ツールを手に入れることが可能なのです。
とてもややこしいと感じる部分だと思いますが、もし内容を見てもよく分からなかった場合は、そのITツールを申請しているIT支援事業者へ問い合わせを行ってみましょう。
どのみちIT補助金の申請は、そのIT支援事業者を通さなければ、導入ができません。その支援事業者が信頼に値する業者かどうかを見極める意味でも、色々と相談してみてください。
マッチングサイトやクラウドファンディング等のWEBサービスを始めたい場合はどちらの補助金?
マッチングサイトや、クラウドファンディング、その他ウェブ上でのサービス・アプリ等を始めたい場合、基本的には『ものづくり補助金』となります。
ものづくり補助金では『革新性』が求められるので、完全オリジナルな事業やこれまで他社が参入していないような業種でのサービスならば、受かる可能性はぐんと上がることでしょう。
しかしながら、オリジナルでWEBサービスを始める、となればそれなりに費用はかかりますし、
すでに同業他社が多く存在する場合は、革新性が認められない……というケースもありえます。
もし『コストをあまり高くしたくない』『正直、革新性に乏しい』という場合は、IT導入補助金でWEBサービスが制作できないか、確認してみましょう。
先程社内向けツールで挙げたケースと同じようなやり方ですが、
例えば『クラウドファンディング』や『マッチングサイト』といった、すでにいくつも類似したサービスがあるシステムであれば、パッケージングされたITツールが登録されている場合があります
ある程度のカスタマイズなら、IT導入支援事業者の方で対応出来るかもしれません。
この方式ならば、ものづくり補助金で新しくシステムを開発するよりも、遥かに低コストで仕上げることが出来るのです。
補助金に詳しいシステム会社へ相談を
いくつかの例を挙げてご説明しましたが、読んで分かる通り補助金のシステムというのは、複雑な上に厳格です。
実際に申請を行う際には、各補助金の要件を満たしたり、適切な形で書類を整えたり、といった作業が必要になります。
なので、もしIT関連で補助金を使う場合は、ぜひ補助金に対してある程度知識のあるシステム会社へ、ご相談することをオススメします。
というのも、IT補助金であれものづくり補助金であれ、どのみち申請前にシステム会社へ相談することとなるからです。
IT補助金は、そもそもIT支援事業者を通さなければ申請ができません。
またものづくり補助金も、システムの制作を含む場合は見積書が必要となります。(単価50万円を超える場合は、相見積もりも必要です)
なので把握するのが大変な補助金の要件について、時間を掛けて読むのもいいのですが、
実際には、さっさとシステム会社へ連絡を取って、お勧めの補助金や、実際の費用感・スケジュール等を聞いてみるほうが、ずっと効率が良いでしょう。
TodoONada株式会社でも、補助金を使ったシステムの制作・ご相談を承っております。
IT補助金やものづくり補助金はもちろん、補助金を使わずとも低コストで開発する方法等、多岐にわたってご案内ができますので、ぜひ開発の際はご相談くださいませ。