このデジタル時代に、ECサイトや自社メディア等、新規の事業を始める企業が多くなっています。
また、業務改善として社内ツールを導入したり、既存の事業をWEB展開される企業は更に多いでしょう。
もちろん、これらの取り組みはとても良いものですが、進めるのはちょっとだけまってください。
そのような取り組みに補助金が出るのはご存知ですか?
ひょっとしたら半額、もしくは1/3のコストで導入が可能かもしれません。
実を言うと、経済を活気づかせるため、そして日本企業のITリテラシーを向上させるため、新規事業やITツールの導入には補助金が出るのです。
ただし何でも使える……という訳でなく、細かくルールが決まっていますので、しっかり調べた上で利用を検討されてください。
それでは、使える補助金の例を取り上げます。
IT新規事業や、ITツールの導入に使える補助金
ものづくり補助金
『ものづくり補助金』は、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を目的とした補助金です。
(なお余談ですが、この”補助金の目的”はただの看板ではなく、各種ルールや応募内容の審査基準としても使われたりするので、ぜひ意識して覚えておきましょう)
ちなみに”革新的サービス開発”とついていますが、ただ奇抜で革新的であればいい……という訳でなく、少子化や法改正などの変化に、中小企業がついていくためのサービス開発・発明を主な目的としています。
(この点はそこまで”絶対”といった様相ではありませんが、全く革新的ではない……といった場合はさすがに対象外となりますのでご注意ください)
ものづくり補助金は、以下のような取り組みに対して利用できます。
- 革新的な新商品・新サービスの開発
- 作業進捗を見える化する等の、生産体制を強化するツールの導入・開発
- 雇用拡大に伴う新サービス及び、その提供改善等に必要なシステム費用
- DXに関する設備・システム費用
- 温室効果ガスの排出削減に寄与するサービス・システム
- 海外事業の拡大を目的としたブランディング・プロモーション
- 上記のために必要なECサイト等
各ツールによって金額の上限下限や、補助率が変動します。
(非常に細かいのでここについては募集ガイドをご確認ください)
なおものづくり補助金は、以下のような目的には使えません。
- 既に発注・開発しているシステム
- 汎用性が高く、他の業務にも使えそうな製品の購入費(例:パソコン・スマホ・車・文房具等)
- 特に受発注機能等のない、単体のホームページ制作
(革新的な新規事業に関するHPなら、広告宣伝費として申請することもできますが、割合が決まっているため注意してください
また、ものづくり補助金は、補助金額の下限が100万円となっています。
多いなら良いじゃないか、と思うかもしれませんが、
2/3補助の100万円下限の場合、確実に150万以上を使う計画を建てて、それを遂行しなければなりません。(50万円は自己負担です)
それも念頭に入れて計画を建ててください。
IT導入補助金
『IT導入補助金』は、中小企業の労働生産性向上を目的とした補助金です。
以下のような取り組みに対して利用できます。
- 業務管理ツールや顧客管理ソフト等の効率化を図れるITツールの導入
- サイバー攻撃等に備えるセキュリティ対策ソフト
- 会計ソフトや受発注ソフト、そしてECサイト
- インボイス制度対応に伴う取引デジタル化ツール
- 地域・サプライチェーン等のDX(複数社のみ)
各ツールによって金額の上限下限や、補助率が変動します。
(非常に細かいのでここについては募集ガイドをご確認ください)
なおIT導入補助金は、以下のような目的には使えません。
- 企業公式サイトの制作・リニューアル
- 完全なスクラッチで(1から)作るITツール・ITサービス
- パソコンやスマートフォンの購入費用(ただし、デジタル化基盤導入類型でソフトと合わせて購入する場合は対象)
- IT支援事業者が提供していないITツール
特に最後の『IT支援事業者が提供していないITツール』といったものに補助金が使えない点は注意してください。
IT導入補助金は、IT支援事業者を通さなければ申請が行えません。なので新規でシステムを作ろうとしたり、どのIT支援事業者も登録していないITツールを使おうとしても、申請を行うことができないのです。
(ただし、対応範囲が非常に広いITツールを導入し、カスタマイズすることはできます)
小規模事業者持続化補助金
『小規模事業者持続化補助金』(以下、持続化補助金)は、地道な販路開拓等の取組、及びそれに伴う業務効率化に対する補助を目的とした補助金です。
以下のような取り組みに対して利用できます。
- 『販路拡大』
- もしくは『販路拡大』+『賃金引き上げ』『小規模事業者からの脱却』『後継者支援*』『創業*』のいずれかを目的とした取り組み(*は特定の条件有り)
- 上記に必要な以下の費用
- 機械装置(購入・レンタルどちらも)
- チラシやウェブ制作費、展示会費用
- 展示会出品等に掛かる旅費
- 開発費や資料購入等の費用
- 販路拡大等のために必要なスペースを開けるための設備処分費
- 上記を第三者に委託する際の外注費
持続化補助金では、基本的に2/3が補助されます。
ただし『賃金引き上げ枠』に応募した赤字事業者については、3/4が補助されるという特例があります。
なお持続化補助金は、以下のような目的には使えません。
- すでに行っている事業に関する費用
- ホームページ・ECサイト単体の制作(あくまで販路開拓が主でなければなりません。補助枠の1/4までなら使えます)
- 汎用性が高く、他の業務にも使えそうな製品の購入費(例:パソコン・スマホ・車・文房具等)
システムの開発に持続化補助金は使える?
なお、『システムの開発費』として持続化補助金を使う場合ですが、少しややこしい話になります。
例えば新規販路開拓に伴い、SNSへ自動で広報を行うシステムを作る場合、これは『ウェブサイト関連費』に該当し、補助金総額の1/4までしか使えません。
しかし、販路拡大実施に役立てる顧客管理ソフトの開発・購入等は、『ウェブサイト管理費』に該当しないとのことです。
ぜひ応募の際は、自身の検討している事業が該当するのか、確認した上で申し込みを行ってください。
補助金を使ったIT新事業・効率化の例
ECサイト制作:50万~
ECサイトはとても補助金が使いやすい事業拡大のツールです。
主に『ものづくり補助金』『IT導入補助金』を使うことができます。
『持続化補助金』に申請することも不可能ではありませんが、第8回からECサイトであっても、申請額の1/4を超えてはならない、という制約ができたため、あまりおすすめできません。
また『ものづくり補助金』の場合は、補助の下限が100万円となっていますので、最低でも150万円をプロジェクトに使わなければなりません。
IT導入補助金の場合は、ほとんど下限については考えなくとも大丈夫ですが、IT支援事業者に依頼する形でしか補助金を受けられませんので、ご注意ください。
業務改善の社内システム:50万〜
受注管理システムや顧客管理ツール、及び社内チャット等も、補助金を受けられる対象となります。
ただし、各補助金によって通る補助金・通らない補助金等クセがありますのでご注意ください。
例えば自社専用の社内システムを、スクラッチ(一から)作る場合、『ものづくり補助金』が使えます。
『IT補助金』はIT支援事業者が登録しているツールから選ぶ形なので、1からつくることはできません。
変わりに既に製品として公開されているサービスを導入する場合、
『ものづくり補助金』は使えなくもないのですが、メインとなる”革新的な事業”を立ち上げて、それに付随する形で利用する必要があります。(この場合、メインの事業に対して使うことができません)
一方で上記のケースでは『IT補助金』を使うことができます。
ただし、その製品がカバーする範囲によっては、単体での申請ができない可能性もあるため注意してください。
マッチングサービスの開設:150万〜
マッチングサービスの開発については、一見「補助金が使えるのだろうか……?」と思われるかもしれませんが、以外にも今回取り上げたどの補助金でも使うことができます。
ただし、それぞれの補助金の目的に沿った形でなければ、受かるのが難しいのでご注意ください。
例えば『ものづくり補助金』であれば、ただの素朴なマッチングではなく、何かしら革新的な要素が求められます。
『IT導入補助金』であれば、マッチングサイトのパッケージングされたCMS等を利用する形でしか作ることができません。
『持続化補助金』を使う場合は、”販路拡大”が目的なので、すでに行っている事業の販路をマッチングサイトを使ってどう拡大していくのかについて、応募書類で説明する必要が出てくるでしょう。
ただし、そもそもマッチングサイトを作る場合は、革新的な要素・設計のノウハウ、そして既に持っている顧客リストをどう展開するか、といった要素が重要になるため、
しっかりとしたマッチングサービスのアイデアならば、おそらくどの補助金でも条件を満たすことでしょう。
なお、そのような『マッチングサイトを計画するにあたって重要なこと』については、下記記事にてまとめてありますのでぜひ御覧ください!
補助金は強力……だからこそ、ルールが厳格
ここまでざっと補助金についてご説明しましたが、今回はとにかく概要をご紹介する形なので、細かいルール等については省略しています。
(各補助金については、いずれそれぞれ詳細な記事を出す予定です)
補助金は厳格にルールが定められており、少しでもルールから外れていると落選します。
ただ落ちるだけならばまだマシで、採択後の手続きでミスすると、採択取り消しや、最悪の場合以後の採択から締め出されることすらあります。
ただし国からの補助金は、ときに数百万円もの恩恵を受けることができる、強力な支援です。
純利益でそれだけの金額を用意するとなれば、決して簡単にはいかないはずです。ましてや新規事業ならなおさらでしょう。
ぜひこれから行う新規事業が、補助金の対象となるのかどうか。
しっかりとルールや申請方法を確認した上で、利用を検討されてみてください。