先日、社内ITの底上げが大切なことについては解説しましたが、
すでにITパスポートレベルのリテラシーがある人は、何を習得したらいいでしょうか?
そういった方には、ぜひプログラミング技術の習得を推進したいと思います。
「AIが進化している中で、プログラミングは必要なのか?」と思われるかもしれませんが、むしろChatGPTがある今だからこそ、プログラミングをおすすめしたいです。(その理由については記事の末尾でご紹介します)
今回の記事では、ITについてある程度知識を有している人が、初めてプログラミングに着手する際、どの言語がふさわしいかについて解説します。
この記事の対象読者
- ITパスポートや基本情報を取得してプログラミングをやってみたい人
- プログラミングはしないがIT関係の仕事をしている人
- 本職はエンジニアではないけど、プログラミングを覚えたい人
Python
最初にご紹介するのはPythonです。
『Python』という言語は、一人のプログラマが趣味の延長線上で開発した言語なのですが、
その後、この言語が持つ特性が非常に評価され、2023年3月の調査では『最も人気の言語』として首位に輝いています。
『Python』をプログラム初心者におすすめする理由
この言語を初心者の方におすすめする理由はいくつかあります。
一つは『導入が非常に簡単』なことです。
通常のPythonをインストールすれば、あとはエディタに書くだけでプログラムを実行できますし、anaconda等のパッケージをインストールすれば、エディタすら要りません。
また『シンプルで可読性が高い』という特性もあります。
Pythonの文法は非常に直感的で、英語に近い形でプログラムを書くことができます。そのため、初心者でもサンプルコードを見ただけで、それがどのようなプログラムなのか理解しやすい言語です。
また、他の言語と比較してもコードが短く、明確で、冗長さが少ないため、非常に学びやすく書きやすい言語と言えます。
ビジネスシーンで『Python』はどう役に立つか
Pythonはビジネスでも非常に役に立つ言語です。
というのも、Pythonがこれだけ人気なのは、単に簡単でシンプルだからではありません。
自動化や機械学習といった、業務で有用な操作を行わせるのに、とても便利な言語だからです。
例えばExcelの自動化等も、数行で操作を指示することができる上に、windows・mac等のOSに左右されることなく自動化することができます。
ネット上の情報も非常に豊富なので、よほど特殊な作業でない限りは、アシストしてくれるライブラリやサンプルコード等が見つかるでしょう。
もし極めることができれば、非常に高度な社内システムを構築することも可能です。
(DropboxやInstagram、YoutubeもPythonで作られています)
またChatGPTとも非常に相性がいいです。
そもそもChatGPTのサーバサイドはPythonで構成されているのはご存知ですか?
なので、ChatGPT公式のドキュメントや、github等で紹介されているコードも、ほとんどがPythonで書かれています。
特にChatGPT API等を用いて業務に特化した使い方をする場合は、Pythonが書けると非常に便利です。
GAS(Google Apps Script)
ひょっとしたら『GAS』という言語について、あまり耳に馴染みがないかもしれませんが、GASは『Google Apps Script』の略称です。
『Officeで言うVBA』と言えば、わかりやすいでしょうか。
Googleドキュメントやスプレッドシート等の操作を自動化したい際に使うために作られた言語、それがGASです。
『GAS』をプログラミング初心者におすすめする理由
先程Pythonについて説明した際、『導入が簡単』という話をしましたが、GASは更に輪をかけて簡単です。
なぜならGASはGoogleのクラウド環境上ですべてを行う言語なので、そもそもシステムのインストール作業等が必要ありません。
WindowsだろうとMacだろうと、なんならChromeOSだろうと、Webに繋がってさえいればすぐにプログラミングを始めることができます。
また、GASのベースとなっている言語はJavasScriptです。
JavaScriptは、Web開発等で非常に広く用いられている言語で、現在ほぼすべてのウェブサイトにJavaScriptが使われていると言っていいでしょう。
そのような便利な言語を習得する入り口として、GASは優れているとも言えます。つまりは、GASを学ぶことは、JavaScriptを学ぶことでもあるのです。
ビジネスシーンで『GAS』はどのように役に立つか
これは言うまでもないですね。
表計算・ドキュメント・スライド、どれを取ってもビジネスが主戦場のアプリです。
デフォルトのUIや関数でできないような動作であっても、GASを使いこなせれば少ない工数で行うことができます。
更にはgmailやSlack、Chatwork等、外部のツールとの連携も可能です。
これがどれだけビジネスの幅を広げるか、想像してみてください。
例えば、毎日Slackに手動で送っていた報告や、複雑なレポート作成・送信等も全て自動化することが可能になります。
『最短で業務の役に立つ言語を学びたい』と思われる場合、GASこそ最適な言語と言えます。
C言語
ここまで”学びやすく・役立ちやすい”言語を紹介しましたが、『学ぶなら本格的にやりたい』と思う方向けの言語も紹介しましょう。
それは『C言語』です。
『C言語』をプログラミング初心者におすすめする理由
C言語は、言ってみれば『王道』の言語です。
C++やC#はもちろん、Java、Javascript、PHP、Ruby等、現在広く使われている言語の下地となっているのはC言語です。
また、多くの組み込みシステムやデータべースエンジン、そしてOS等にC言語は使われています。
皆が使っているWindows10すらも、その98%はC言語で書かれているだろうと推測されています。
正直言うと、C言語を学ぶのは簡単なことではありません。
C言語は開発用語で言うところの『中レベル』もしくは『低レベル』言語です。
これは決して『易しい』といった意味合いではなく、コンピュータの根幹部分であるCPUやメモリへ、直接的なアクセスや制御を行う言語になります。
なので、これまでプログラムの動作プロセス等を知らずに使っていた人にとっては、非常に難解で理解しにくい部分が出てくるはずです。
しかし逆に言えば、そのようなコンピュータがどのようにして動作しているのか、という過程を学ぶには適した言語です。
C言語をマスターしていくに連れて、あなたは多くのプログラムがどのように動いているのか、その根幹から理解できるようになるでしょう。
更に、先程述べた通りC言語は王道の言語であり、他言語のベースになった言語です。
なので先人が書いたあらゆるドキュメント・サンプルコードがネット上に転がっています。学習の教材に事欠くことはありません。
ビジネスシーンで『C言語』はどのように役に立つか
これも正直に言ってしまいますが、企業の担当者レベルで必要な言語ではありません。
もしあなたがプログラムを学んで、即戦力として会社の役に立ちたいのであれば、先程挙げたようなPythonやGAS、もしくはphpやJavascript等を学ぶことをオススメします。
しかしながら、もしあなたがプログラミングという学問の扉を叩き、『これから本格的にプログラマとして業務に携わりたい』と思うのであれば、C言語から学習を始めるのは悪くありません。
ひょっとしたら、パズルゲームのようなC言語の魅力にはまり、プログラミングに強い興味を持つようになるかもしれません。
この通り、もし真剣に勉学としてプログラムを学びたいという方であれば、是非C言語から始めてみてください。
ChatGPTがある今、プログラミングを学ぶ意味
さて、言語を一通り紹介したので、序文で書いた疑問に答えようと思います。
『なぜChatGPTがプログラムを掛ける時代に、プログラミングを学ぶのか』という疑問です。
ChatGPTが公開された際、一つの議論が起こりました。
それは『プログラマという職業は、今後無くなってしまうのではないか』という議論です。
確かにChatGPTはプログラムができます。
特に今回挙げたような有名な言語において、多少勉強した程度で作れるような簡単なプログラムであれば、ものの数秒でChatGPTが吐き出してくれるでしょう。
そこまで技術が発展したのであれば、プログラミングを勉強する必要などないのではないか。
そんな状況で、非エンジニアが可処分時間を使ってまで勉強する意味等無いのではないか……。
という意見も一時SNS上には見られました。
しかしながら、エンジニアサイドからみればこれは誤りです。
ChatGPTは現状、どこまでいっても『求められた解答を返す』チャットボットでしかありません。それは『求める』という部分を正しく行わなければ、必要とする解答を得ることができない、という意味にもなります。
そしてChatGPTに正しく求める・要求するには、プログラミングの知識が必要不可欠です。
例えば上記でGASをご紹介しましたが、
これまで一切GASを勉強したことのない人に、突然『スプレッドシートで上がってくる営業日報を自動で集計・レポートにしてPDFで自動出力されるようにしてください』と言って、どれだけの人が対応できるでしょうか。
いくらChatGPTを使ったとしても、ほとんどの人には無理でしょう。
元になるシートをどう指定すれば良いのか、そもそもどこにコードを入れたら良いのかすらわからないかもしれません。
しかし付け焼き刃でも少しの勉強をしていれば……?話は全く変わってきます。
ChatGPTの書いたコードが、どのような処理を行うものであり、どこにどんなファイルを置く必要があるのか、頑張れば読み解くことができるでしょう。
もし分からなければ、それもChatGPTに説明してもらえばいいだけです。その際も、一切勉強していなかった人より適切に質問することができますし、解答を読み取る力にも差が出ます。
逆に言えば、これまで非常に長い勉強時間や経験を積まなければ書けなかったようなコードやプログラムを、ChatGPTを使うことで簡単に手にすることができる時代なのです。
これ以上費用対効果のいい勉強は無いかもしれません。そのぐらい、今プログラミングを勉強することにはメリットがあるのです。
なので、すでに多少のITリテラシーをお持ちの方であれば、是非自己投資としてプログラムの勉強をされるようお勧めします。
ChatGPTが進化している今だからこそ、非常に大きなリターンを望むことができるスキルです。