システム開発の見積もり書を読む方法 – 見積もりの種類と相場観

システム開発を依頼する際、見積もりを提示されて頭を悩ませたことがありますか?
特にIT関連以外の事業を行っている会社さんからすれば、これは大変な問題です。そもそも見積書を見ても、内容がさっぱりわからないかもしれません。

しかし見積もり書をよく吟味し発注先を決めることは、事業にとって非常に重要な決定です。
この記事では、見積書の読み取り方や、優れた発注先を探すためのノウハウを解説致します。

目次

見積もりのタイプは大きく分けて2つ

システム開発で出される見積もりは、ざっくりと以下の2つに分けることができます。

  • 人月単価計算の見積もり
  • 機能ごとに計算する見積もり

もちろんケースバイケースで、どちらとも言い難い項目や、複合した見積もり等を出されることもありますが、おおよそはこのどちらかを主軸に作られていることが多いです。

そしてそれぞれの項目自体は、非エンジニアの方でも簡単に読むことができます。

人月単価計算の見積もりとは

システム会社で一番多い見積もり方法がこれです。

『人月』とはエンジニア一人当たりの労働時間を表す単位です。
なので『1人月』とは、おおよそ『160時間』ほどの労働時間を指します。
(8時間×20日=160時間)
同様に1人日(8時間)1人時(1時間)という単位も存在します。

といっても、もちろん全てを1人で作業する訳ではありません。
とあるタスクに『1人月掛かる』と書いてある場合は、
『2人のエンジニアが80時間掛ける』のかもしれませんし、『4人のエンジニアが40時間掛ける』のかもしれません。
いずれも160時間になるので、これは『1人月』です。

そして『人月単価』とは、エンジニア一人あたりが1人月作業した場合の価格を表します。

……といっても「あのシステム会社は月給40万で求人を出していたから、人月単価は40万か!」というのは、もちろん違います。
当人に支払う給与以外にも、税金、会社の利益、諸経費等を含める必要がありますし、
タスクの難易度・取り組むエンジニアの練度等によっても、この人月単価は変動します。
詳しい相場は後述しますが、おおよそ『90万円程度』になることが多いようです。

この人月と人月単価を使うことで、プロジェクトに掛かる費用を算出するのが『人月単価で計算した見積もり』となります。

例えばプロジェクト全体で『4.3人月』かかるシステム開発があるとしましょう。
見積もりを出したシステム会社の平均人月単価は90万円です。
この場合は、『4.3人月 × 90万円 = 387万円』がシステム開発の見積もりとなります。

人月単価計算方法の工数相場感

ざっくりと人月単価についてご説明しましたが、実際のプロジェクトではもう少し複雑になります。

一般的な会社でも、1年目の新入社員と、皆を取りまとめるリーダーでは人件費が大きく変わります。
それと同じように、システム開発でもタスクの難易度、必要なスキル等によって工数相場は大きく変化します。
(また、地域や会社のブランド力、得意な分野等によっても変わります)

ここに各役職別の相場を書きますので、参考にしつつ見積もりを精査してみてください。

プロジェクトマネージャー 70万~160万円

プロジェクトマネージャー(PM)はプロジェクトの指揮・監督を行う役割の人です。プロジェクトの責任者とも言えます。
単純なスキルだけでなく、指揮・管理能力も問われるため、多くの場合人月単価は最も高く設定されています。
単価に大きく開きがあるのは、プロジェクトの規模によって大変さが段違いになるからです。

なお、実際の見積書には「プロジェクトマネージャーが関わる」とわざわざ書いてある訳ではありませんが、
「ディレクション費」「マネジメント」「プロジェクト管理」等の項目は、プロジェクトマネージャーの単価で計算されていることが多いです。

上級システムエンジニア(上級SE) 70万~120万円

上級SEと書きましたが、「システムアーキテクト」とか「ITアナリスト」と呼んだりします。

スキル面では、プロジェクトマネージャー(PM)とそこまで変わりません。
別のプロジェクトでPMをやっていたり、次のPM候補だったりします。

なので行う工程も開発の上流部分となります。
「どのシステムをどういうふうに構築するのか」という設計部分や、全体の分析作業、プログラマの統括等を行います。

中級システムエンジニア(中級SE) 50万~90万円

システムの動作確認や、テスト工程等を行います。
「アーキテクト」や「ディベロッパー」と呼ばれることもあります。

簡単な部分であれば設計を行うこともあります。

プログラマ(PG) 40万~80万円

指示書にそってプログラムを書く役割です。
決して簡単な仕事という訳ではなく、指示書の要件を満たす形でコードを組む等、色々と技能も求められる職ですが、人月単価は低めの傾向にあります。

機能ごとに計算する見積もり

もう一つの見積もり方法が「機能ごとに計算する見積もり」です。
見積もりを見る人にとっては、こっちのほうが直感的で分かりやすいかもしれません。

WEB制作等では主にこちらの見積もり方法が取られます。
「サービス紹介ページ 5万円  お問い合わせフォーム 3万円」といった具合です。

各項目の価格は、過去のプロジェクトや市場的な価値を元に、受注側が決定します。
一応『FP法』といった根拠を付けることもできますが、それでも主観を排除できる訳ではないので、やはり「受注側の意向」が大きく反映される形となります。

機能ごとの工数相場感

機能毎の見積もりにおいては、「人月単価計算の見積もり」よりも、相場に開きが出ます。
例えば、見積もりを依頼したシステム会社が、「自社でストックしているソースコードを流用できるから」と価格を下げるかもしれません。
逆に流用できたとしても、新規に開発する際と同じ値段をつけるかもしれません。

なので、あくまで例として捉えてもらえればと思います。
これより格段に安い・高い見積もりを出されたとしても不思議ではありません。

WEBサイトのデザイン:10万~50万円
大規模WEBサイトのデザイン:100万~500万円

EC機能:130万~2,000万円
掲示板・口コミ:100万~2,000万円

API開発(簡単なもの):10万~100万円
API開発(複雑なもの):100万~600万円

データベース設計(簡単なもの):50万~250万円
データベース設計(複雑なもの):200万~600万円

単体テスト:10万円~50万円
結合テスト:50万~250万円

プロジェクト管理:50万~250万円
ディレクション費用:全体の約10%前後

システム開発では必ず相見積もりを!その上で確認するべきこと

「結局相場がよくわからない」と思われるかもしれませんが、実際そのとおりです……
『システム開発』と一括りにして語っていますが、その言葉が含む範囲は広すぎます。

いわば『車』を作ってもらうようなものです。
作って欲しいのが自転車なのか、4輪車なのか、トラックなのか、スポーツカーなのか、それによって状況に天と地の差が生じます。
更に、同じ速度で走る車であっても、安全性や信頼性、メーカーのブランド力によって価格は大きく異なるでしょう。それと同じ話です。

ではどうやって『一番優れた見積もり』を出してもらえばいいのでしょうか?
答えは1つです。『必ず相見積もりを取る』ようにしましょう。

ただし、『一番安いものを選べばいい』という訳ではありません。
それぞれの見積もりを比べた上で、いくつか確認してほしい点があります。これは重要な点なので、別記事で詳しく語ろうと思いますが、ひとまずは以下の点を比較・精査してみてください。

相見積もりを取った上で確認したい点

  • スケジュール。何をいつまでに開発するか?
  • 開発スコープは何か?
  • 開発は何人体制で行うのか?
  • プロジェクトマネージャーは誰が行うのか。
  • 打ち合わせの頻度、時間
  • 開発環境、動作環境は
  • 使用する言語やミドルウェア、パッケージ等
  • 使用するサーバー・クラウド・パッケージ製品の利用料
  • デザインはどのように行うのか?誰が担当するか?

この中でも、特に以下の2点には気をつける必要があります。

開発のスコープは?

『スコープ』は「範囲」「領域」という意味ですが、システム開発においては『作業範囲・要件・対応範囲』等を意味します。
つまり、どの機能を開発し、どの機能を開発しないのか、綿密に決めておく必要がある、ということです。

例えば『アプリ開発』を依頼したとしても、Webブラウザで動作するアプリなのか、スマホアプリなのか、決めておく必要がありますし、
スマホアプリだとしても、iOSなのかAndroidなのか、両方なのかで仕様・開発工数・見積もりに大きな差が生じます。

同じ単語を使っていても、認識が食い違うことは多々あります。しっかりと確認を行いましょう。

プロジェクトマネージャーは誰が行うのか

営業に来た人がすごく立派で、造詣も深く、『この人になら任せられる』と発注を決めたのに、実際のプロジェクトマネージャーは全く別の人だった……、というケースは多くあります。
プロジェクトマネージャーが営業も行う、というケースがそもそも稀なので当然ではあるのですが、
しかし実際にプロジェクトを始めると「営業の人に伝えたことが全くPMに伝わっていなかった」ということありますし、それが元で炎上する開発も少なくありません。

プロジェクト開始前に、営業・プロジェクトマネージャーと3者で面談を行い、しっかりとすり合わせを行いましょう。
その際、先程のリストを確認しておくことで、認識の違いによる事故を避けることができます。

最終的には相性がものを言う

ここまで各見積もりの見方、相場等について語ってきましたが、
実のところ、見積書のみで発注先を決めるのはあまりおすすめできません。

「安い会社はトラブルを抱える可能性がある」とか「大手は無駄にコストが上乗せされている」等、色々理由はあるのですが、
一番の理由は『システムは発注側と受注側、双方が協力しなければ良いものが作れないから』です。

あなたがシステム開発について専門家でないように、システム会社もあなたの事業の専門家ではありません。
何を必要としているのか、何が最良なのか、お互いにしっかりと伝え合うことで、初めて最高のシステム開発を行うことができるのです。

……といいつつ、「この担当者はいい人だ!」と思っても、トラブルが起きることはあります。
「担当者がいい人」でも「発注先がいい会社」とは限らないからです。

次回、それら発注する前に確認するべき点を取り上げます。

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