ECサイトやウェブサービスを開設する上で、重要な要素の一つが「決済」です。
商品やサービスを提供するだけでなく、その適切にお金のやり取りが行えなければ、ビジネスとして成り立たないと言っても過言ではありません。
しかし、決済処理は法律やセキュリティ、システムの導入など、広く確実な専門知識が必要となる領域なので、基本的には決済代行業者を使うことが主流です。(このあたりはいずれ別記事で詳しく説明します)
では、その決済代行業者を選ぶ際には、何を基準に、どのように選べば良いのでしょうか。
本記事では、決済代行業者を選ぶ際に考慮すべきポイントや注意点について、様々な視点から解説を行います!
ぜひ、決済代行業者を選ぶ上での指針となれば幸いです。
※なお最初に書いておきますが、決済代行業者との契約は、最短で1~2ヶ月は掛かると思っておいてください。(後述するような特殊な業種は更にかかります)
とにかく早めにリサーチ・連絡を行うようおすすめします。
取引する商品・サービスは何?
決済代行会社を選ぶに当たり、手数料や入金スパン等が気になるかとは思いますが最初に考えなければならない点はそこではありません。
まずは『何を取り扱うのか』について考えてください。
なぜなら『取り扱う商品によって、適切な決済代行業者が変わってくる』からです。
『クレジット』にはそもそも『信用・信頼』といった意味合いがあります。
よく『信用できる人に変わって一時的に支払う』という意味合いで説明されることが多い文章ですが、
これは『クレジット決済を導入する店舗・サービス』にとっても同じです。
クレジット決済はどの事業者でも導入できるわけではなく、業種や商品によってはNG、もしくは非常に厳しい審査が行われます。
そのような審査を儲けることにより、クレジットブランドのイメージを保持し、円滑な決済を実現しているのです。
もし以下のような業種であれば、審査に通らない可能性があります。
- ポルノ・アダルト的な製品
- お見合い・出会い系
- 法的にグレーな業種・イメージが悪い業種
- クラウドファンディング
- エステ・美容系
- 学習塾・セミナー・情報商材
- 金融・仮想通貨関連
また以下のような製品を取り扱う場合、決済代行業者によっては審査に落ちるかもしれません。
- 宝石・貴金属・金券
- 絵画
- 医療品・医療機器
- 毛皮
- エステ・美容関連機器
- 浄水器・温水器
- 高級布団
- 教材
- 法的にグレーとみなされるもの、取り扱いに年齢制限がつくもの
もちろん上記に該当するからとって、全て審査に落ちるという訳ではありません。
決済代行業者によっては受付ている所もありますので、もし業種や商品のせいで審査に落ちる……という場合は、『事前にNGを聞く』『同業他社がどこの決済代行業者を使っているか調べる』といった対策を取ってみてください。
ちなみに、取扱商品をごまかすことは絶対にしてはいけません。
『主要な商品ではないから』といった理由で隠した場合、決済機能の停止や、最悪の場合売上金の没収すらありえます。
取扱商品は、詳しく正直に書いてください。
決済手段、方法
次に考慮すべき点としては、『決済手段』が挙げられます。
先程から、メインのクレジット決済について多く話していますが、『コンビニ決済』『キャリア決済』『キャッシュレス決済』『後払い』等も決済代行業者を通じてサービスを利用することが可能です。
ただし、どの決済サービスに対応しているかは決済代行会社によって違います。
ターゲット層をうまく見極めて、適切な決済手段を選択しましょう。
(例えば、少額・若年層がターゲットの場合はキャリア決済が適しているかもしれません。高額・アパレル商品等は後払い決済と相性がいいと言われています)
なお決済手段を考える際は、ぜひ将来的なビジョンも考えた上で決定してください。
『いずれコンビニ決済も導入したいが、売上が伸びるまではクレジットのみでいいだろう』と考えて、手数料の安い決済代行会社に惹かれるかもしれませんが、途中から決済代行会社を変更するには、皆さんの想像以上に大変な作業・コストが必要になります。
トランザクションの表示名(明細上の名前)
次にご説明するのは『トランザクションの表示名』についてです。
あまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、要はカード明細等に表示されている店舗やサービスの名称、それが『トランザクションの表示名』と思ってください。
これについて『好きな名称を表示できるのでは?』と思われるかもしれませんが、実のところ決済代行業者によってルールや仕様が異なります。
例えば以下のような形です。
- 管理画面からいつでも自由に設定可能
- 申請時に決定したものを表示
- 強制的に契約した法人名を表示
- 強制的に決済代行業者の名前で表示
- 独自の決済プログラムを組んだ場合のみ変更可
決済代行業者によってかなり異なる部分なので、もし表示名が重要な業種等の場合は、しっかり確認の上契約を行ってください。
(明細を見られるのが恥ずかしい業種・複数の屋号をもつ会社 等)
またモール系ECサイト等、第三者の法人が係る場合等は、トランザクションの表示によって色々な問題が起きるケースもありますので、しっかりと協議・確認を行った上で運用しましょう。
支払いサイクル・最低支払額
決済代行業者によって異なる要素はもう一つあります。それは『支払いサイクル』です。
例えばある日、ECサイトで10万円を売り上げたとして、その10万円があなたの元にすぐ入金される訳ではありません。
いつ入金されるかは『決済代行会社の取り決め次第』なのですが、これも本当に千差万別です。いくつか例を挙げます。
- その月の月末が締め日→来月末日に支払い
- 基本月1回、手数料を支払えば月2回
- 週1回、締めた曜日の3日後に入金
- 月2回入金
- 基本的に月1回入金だが、手動で手続きすれば即時出金も可能(要手数料)
- 翌営業日入金
- 最初の契約時に交渉
上記をみて『早いに越したことはない』と思われるかもしれませんが、その分高い手数料が設定されていることもあります。
逆に手数料が安かったとしても、仕入れ値が高い商品を取り扱っている場合は、入金までのスパンが足かせになったり、資金繰りが回らなくなるかもしれません。
また、決済代行業者によっては『最低支払金額』を定めているケースもあります。
その金額に満たなかった場合、次の支払日まで売上金がプールされるという仕組みです。
そこまで高い金額が設定されていることは無いかもしれませんが、これにも注意しましょう。
必要な免許の取得・ガイドラインへの対応はできている?
これはどの決済代行業者を使う上でも同じ点ですが、『必要な免許の取得』『業界で定められているガイドラインへの対応』は必ず行いましょう。
よくありがちなケースとしては、ECサイトで酒類を誤って販売してしまうケースです。
実店舗や会社で「酒類販売業免許」を持っているので、そのままネットでも販売してOKと思ってしまうかもしれませんが、
ECサイトで酒類を販売する場合は「通信販売酒類小売業免許」という資格が追加で必要となります。
単純に『資格が必要』という事業の形態もありますし、
先程のように『実店鋪の資格』と『ネット上で行う際の資格』が別に必要というケースもあります。
資格が必要な例
以下にそのような例をいくつか挙げてみます。
※あくまで例なので、実際に事業を行う際は更に詳しく調査を行ってください。
- 証券・FX・投資助言・仮想通貨:金融商品取引業の登録が必要
- 中古品:古物商免許が必要
- 自社で加工した食品:食品衛生責任者の資格が必要
- 医薬品:複数の資格・条件・表記等、厳格に決められている
- 化粧品:自社で作る場合、化粧品製造業・化粧品製造販売業が必要。製品によっては医薬品と同じ手続きが必要
- ペット・爬虫類等:第一種動物取扱業の資格が必要
- マッチング・婚活関連:インターネット異性紹介事業の届け出が必要
- チャットルーム、会議システム、IoTサービス、SNS等:電気通信事業の登録・届け出が必要
- 電子マネー・割り勘アプリ・投げ銭:資金移動業者の登録が必要
販売に関し、ルールやガイドラインが定められている商品・サービス
また資格とは別に、販売手法や広告表現等が厳しく定められている商品もあります。
例えば先程も挙げた酒類の販売では、「未成年者の飲酒は法律で禁止されています」「未成年者に酒類は販売していません」といった表記を、ページや明細に『価格と同じかそれ以上のサイズ』で記述する必要があります。
また、基本的にネットショップ・WEBサービスを開く際は『特定商取引法』で定められているガイドラインに従う必要があります。
これには、単に『特定商取引法に基づく表記』というページを作るだけでなく、
広告メールや注文確認画面等、様々な場所のガイドラインが定められています。
こういった細かいルールは全て守るようにしてください。
中には罰則が設けられていないルールもありますが、
それらを『罰則が無いから』と無視した場合、決済代行業者の審査に落ちたり、契約を取り消されることがあります。
世の中には守ってないショップも確かにありますが、基本的には過剰なぐらいに守る方が無難です。
なお特商法以外に、特別なルール・ガイドラインが定められている業種・製品についても、例を提示します。
- 健康的なメリットがありそうな食品・製品:薬機法により、表現が厳しく制限されています。
- 電子機器やヘルメット等の安全に関わる製品:製品安全法令により、出力や材質が制限されています
- 強力な磁石:対象年齢14歳以上の設定・表記が要請されています
- 電気通信事業者・第三号事業者:改正電気通信事業法により、販売の有無等に関わらず、Cookieの取得等において同意が必要になっています。
- 懸賞・おまけ・ガチャ等:景品表示法で、上限や表記のルールが定められています。
- 酒類:通信販売酒類小売業免許申請の手引(PDF)の中で、表記のルール等が細かく定められています。
また、公的に定められているガイドライン以外にも、
決済代行業者自身が、独自のガイドラインを定めている場合があります。
これについても早めの対処を行い、スムーズに審査を受けましょう。
決済システムの仕様 – 対応しているCMSや方式
そして少し難しい内容になりますが、決済システムの仕様についても、決済代行会社によって異なる部分です。
もしEC-CUBEやWelcart等のCMSを利用したネットショップを開く場合、決済代行業者の方で対応するプラグインが用意されているか、調べてみましょう。
もし対応していない場合は、システム会社等に依頼して決済部分を実装する必要があります。
また、実装に関わる点として『リンク型』『API型』といった接続方式も選択する必要があります。
リンク型とは
リンク型は、決済の時点で購入者が『決済代行会社』のサーバへ飛び、そこで決済を行う方式です。
決済は全て決済代行会社のサーバ上で行われるため、決済画面の実装を行う必要がありません。またセキュリティにも強いです。
その代わり、決済画面のデザインを変えたり、フォームを追加したりすることは基本的に不可能です。
またネットショップやWEBサービスとは、全く違うデザインの決済画面になるため、購入者が混乱することがあります。
API型とは
決済画面と決済代行会社のシステムを、APIによってつなぐ方式です。
リンク型と違い、ショップのデザインを保ったまま決済画面を完結させることが出来ます。
また独自の項目を入れたりと、カスタマイズすることも可能です。
その代わり、画面の実装は店舗側が行わなければいけません。もし実装時の誤りにより決済が出来ていなかったとしても、店舗側の責任です。
また、万一ウェブサイトが改ざんされた場合は、顧客のカード番号等が外部に漏れる……といった事態も最悪起こり得ます。
上記のメリット・デメリットをしっかり確認した上で、決済代行業者を選定しましょう!
よく使われている決算代行業者
ここまで決済代行業者の選び方について詳しく説明してきましたが、『結局のところどこがおすすめなのか』といった点を知りたい方もいらっしゃるでしょう。
そういった方のために、よくネット決済で使われる決済代行業者をピックアップしてみました。
ぜひ、ご自身でサービス内容を確認した上で、利用を検討してみてください。
Stripe
Stripeは決済代行業者の中でも、画期的なサービスを提供しています。
まず『初期費用がゼロ』。更に決済金額・決済手法に関わらず『手数料が一律3.6%』
そして『最短一日で導入できる』という驚きのサービスです。
(通常、準備や審査等で一ヶ月以上掛かります)
ただしアメリカの会社なので、導入の際にアドバイスを貰ったり、融通を利かせてもらったり……といったことは期待しないほうが良いでしょう。
SBペイメント
SBペイメントは、ソフトバンク傘下の決済代行業者です。
特色としては非常に幅広い決済手段に対応していることが挙げられます。(執筆時点で39種類)
クレジットはもちろん、キャリア決済(SB以外も対応)やPayPay等にも対応しているため、『とにかくたくさんの決済手段に対応したい』といった場合は非常に便利です。
ただし、手数料は決して安い部類ではありません。
ソニーペイメント
ソニーペイメントは、その名の通りソニー傘下の決済代行業者です。
特色としては、少し特殊な支払い方法にも対応している点です。
例えば『コンビニ決済』や『Pay-easy』『口座振替』『後払い決済』といった決済方法です。
また、一部のCMSを使ったECサイトの場合、初期費用・月額費用ゼロのプランも用意されています。
固定費をとにかく抑えたい場合等に有用です。
GMOペイメント
これもその名の通り、ネットサービスを展開しているGMO傘下の決済代行業者です。
強みについては少し複雑な話になるのですが、接続方式に多種多様な形式が用意されているため、あらゆるシステムとの連携が行いやすくなっています。
例えばAPI接続方式だけでも『プロトコルタイプ』『モジュールタイプ』『Open APIタイプ』が用意されています。
ウェブサービス等、システム開発ごと行うプロジェクトの場合は、是非使いたい決済代行業者です。
決算代行業者でお困りの際はご相談ください
最後に、決済代行業者を選択する際のアドバイスですが、
可能であれば、すでに同様のECやウェブサービスを行っている方に、相談してみてください。
オリジナルのネットショップやウェブサービスを作るというのは、新しく実店舗を立ち上げるのとそう変わらないぐらい難しいものです。
必要な免許がないだけでオープンできなくなりますし、手数料やシステム費用の選択を誤ったばかりに、赤字となってしまうケースもあります。
可能であればなるだけ経験者についてもらい、業者選びや開設準備を行うようおすすめします。
なお私達『TodoONada株式会社』も、あらゆるEC立ち上げやWEBサービス開発に携わってきました。
この記事で取り上げたような点について、実際的なアドバイスが可能です。
もし不安な点や手を借りたい箇所等あれば、ぜひお問い合わせくださいませ。